ワークサンプリング手法を知る : 現場に出る機会を作るワークサンプリング
第4回 ワークサンプリング手法を知る
現場に出る機会を作るワークサンプリング
ここからは稼働分析の手法について解説したいと思います。
稼働分析の手法にもいくつかの種類がありますが、
本コラムではワークサンプリングと呼ばれる手法と、
連続稼働分析と呼ばれる手法について説明してゆきます。
まずは、ワークサンプリングという稼働分析の手法について説明します。
数あるIEの分析手法において、最も企業で実践されていない手法かもしれません。
この手法は主として作業者や設備の稼働率を定量化するために活用しますが、
日報や稼動データなどを活用して稼働率を管理している(明らかになっている)と、
改めて稼動率の分析をする必要性を感じないことが原因かもかもしれません。
しかし、このような認識を持っている方にこそ、本ワークサンプリングの
手法を理解して積極的に活用してほしいと思っています。
■現場に出る機会を作るワークサンプリング
ワークサンプリングは1人の観測者が多数の作業者や設備を
観測することができる手法です。
詳しくは本WEBセミナーの解説に譲りますが、ある一定期間(例えば半日、1日、数日など)の
時間を使い、作業者や設備の稼働状態を定量化する手法です。
具体的には、製品に付加価値を与えている作業(基本機能作業)や
その作業を行うために(付加価値はないが)やむを得ず発生する作業(補助機能作業)、
作業をできていない状態(不稼働)という区分で稼働率を定量化することができます。
企業の方と話をすると、
「現場の作業者は忙しく働いている、設備も良く動いている」
とおっしゃる方も少なくありませんが、現場を長時間見ているとそうではないことに
気付くことも多いです。
実際に私がある企業の現場改善のコンサルティングを始めるときは
ワークサンプリングを実施することが多く、結果として、作業者の稼働率が60%、
設備の稼働率が50%などという結果が出ることがあり、
このような結果を経営者に報告すると驚かれるケースも少なくありません。
ではこの原因を考えてみましょう。
人は現場で作業者や設備を見るときに、今はこういう作業をしていて、
その後こういう動きを取るはずだ、と先読みをしながら現場の状態を見る傾向があります。
そのため、現場を見た時に、瞬間的に作業者や設備が止まっていても、
この後このように動くだろうと予想して現場を見てしまうため、
瞬間的に見たその状態をロスとしてとらえられないことが発生します。
また、現場を長時間見続けるということが少なくなっていることも原因のように感じます。
パトロールなど現場に出て作業者や設備を見ることはあると思いますが、
比較的短時間しか現場を見ていないように思います。
もしかすると、長時間現場を見る機会が少なくなっていて、
現場の状態が正しく把握できていないことも一つの原因だと思います。
人は見られていると作業をしてしまう(不稼働は見られたくない)ようです。
そのため、現場を見ていると仕事をしていない人は少なく、
短時間であればなおさらその傾向は強くなります。
結果として、現場を見ると常に作業をしている場面だけを
見てしまうというのが実態なのではないでしょうか。
このようなことを考えてみると、ワークサンプリングを実施して作業者や設備の状態を
定量化するということと併せ、長時間現場を見て問題や課題を考えられるということが
現場を正しく把握することになると思うのです。